ビブリオバトルが教科書に載る

ビブリオバトルが国語科の教科書に掲載されるようになったのは2016年度以降のことであり、これまでに小・中・高等学校のいずれの教科書にも採用実績が見られるようになった。2016年度の教科書改訂から掲載されたということは、それよりも早い時期に準備が始まったということである。教科書とビブリオバトルの話。
岡野裕行 2021.09.20
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国語科教育とビブリオバトル

これまでにビブリオバトルが教科書に取り上げられた事例は、ビブリオバトル普及委員会の公式ウェブサイトにまとめている。

ビブリオバトルが国語科の教科書に取り上げられるようになったのは、タイミングに合わせた2016年度からのことである。
三省堂、東京書籍、教育出版から出版されている中学3年生用の国語科の教科書がそれにあたる。
いずれもみんなで読書活動を楽しむための方法のひとつとして、教科書のなかで取り上げられている。

ビブリオバトルが国語科の教科書に載るようになる。

これはビブリオバトルの普及活動を考えているビブリオバトル普及委員会としても、とても大きな成果のひとつになったと思う。

教科書検定の準備

教科書を発行するためには、国によって教科書の記載内容が確認される教科書検定制度をクリアしなければならないため、準備期間が必要となる。

文部科学省の説明のなかに「教科書が使用されるまでの基本的な流れ」と「小・中・高等学校の教科書の検定・採択の周期」という図が記されているが、教科書は4年単位で改訂されるため、使用開始年度の前年に採択が決まり、さらにその前に年に検定が行われていることが分かる。

つまり2016年度に使用開始となるならば、2014年のうちには検定用の内容見本ができ上がっていなければならないことになる。
内容の編集作業にかかる時間を考えると、2013年のうちには教科書改訂を見越してプロジェクトを動かし始め、教科書の掲載内容を決めておかなければならないわけである。

2013年の「第三次子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」

そして2013年は、5月に文部科学省「第三次子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」にビブリオバトルが取り上げられたというできごとがあった年である。
これは発表されたタイミングとしても、各教科書会社が次の教科書改訂でビブリオバトルを取り上げようと考える大きなきっかけになったできごとになっただろう。

それまでは、2010年から続く大学生・大学院生による「ビブリオバトル首都決戦」というイベント開催や、2012年の「Library of the Year 2012」の大賞受賞という流れから図書館業界で広まっていく動きが見られたが、2013年の「第三次子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」での言及は、学校教育にビブリオバトルが導入されることを強く後押しするようになったことがわかる。

2013年の文部科学省の計画は、その3年後の2016年度からの国語科教科書へのビブリオバトルの掲載という流れを生んでいったのである。

教科書が使用開始となる2016年4月までには、既に学校教育のなかでのビブリオバトルの実施事例も多数報告されており、あるいはビブリオバトル関連図書としても学校教育を意識したものも増えてきている。

もともとは大学の自主ゼミから始まったビブリオバトルが、広く教育にも活用できる性質を帯びるようになったわけである。

もちろん、ビブリオバトルが実際に学校教育のなかで普及していく背景には、全国の学校教育関係者の人たちがそれを教育手法の一つとして積極的に導入してくださった事例が積み重ねられていたということでもある。

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