Library of the Yearとビブリオバトル

いつの間にかLibrary of the Yearとビブリオバトルの両方に関わるようになった話。この二つは別々の取り組みとして始まっているのだけれど、私のなかでは密接に絡み合っていて、相互に影響関係があったという10年間の思い出。
岡野裕行 2021.12.06
誰でも

Library of the Year 2012の大賞にビブリオバトルが選ばれる

2012年にビブリオバトルがLibrary of the Year 2012の大賞を受賞した。

私はこの受賞のときのプレゼンターの役目を務めている。この頃はビブリオバトル普及委員会の普及委員として加入していたものの、まだ理事どころか東海地区の地区代表にもなっていない大勢のなかのひとりだった。普及委員会のなかでもそれほど目立った活動をしているわけではなく、本務校の皇學館大学で2012年7月から活動が始まったビブロフィリアの顧問として、小さい規模でビブリオバトルを楽しみ始めた頃だった。

そういう状況が一変したのがLibrary of the Year 2012でビブリオバトルの名前が出たことのインパクトと、そのプレゼンター役を務めるという任務が課せられたことである。「ビブリオバトルでLibrary of the Year 2012の大賞を取る」ことを目指して、その当時のビブリオバトル普及委員会の関係者に依頼して、全国各地のさまざまな開催データを集めたりした。

全国的な大学生大会である「ビブリオバトル首都決戦」もプレゼンを構成するための大事な要素の一つだった。「ビブリオバトル首都決戦2012」の開催が2012年10月21日(日)で、「Library of the Year 2012」は2012年11月20日(火)に最終選考会が行われた。

「ビブリオバトル首都決戦2012」に教え子が出場(皇學館大学としては首都決戦に初出場)することもあり、私は引率者として会場である秋葉原に出かけていったが、それは大学生大会に出場する教え子の引率・応援という理由のほかに、「Library of the Year 2012」のプレゼンのための実態調査という意味もあった。「ビブリオバトルという社会現象はいったいどのようなものか」をきちんと見ておかなくてはならない、という思いで「ビブリオバトル首都決戦2012」を見に行ったのである。

「Library of the Year 2012」は、審査員の票数としてはとても僅差だったが、結果的にビブリオバトルは大賞を受賞することができた。そのとき「ビブリオバトルでLibrary of the Yearの大賞に選んでもらうことができた」ということで、一つの役目を果たした気持ちになった。

2012年11月26日、知的資源イニシアティブの公式ウェブサイトに谷口さんの大賞受賞コメントが掲載された。

僕達がビブリオバトル普及活動の中で、いつも言っていることなのですが、ビブリオバトルの目標は、サッカーやドッジボールと同じような「普通名詞」になることです。日常生活の中に自然と存在するビブリオバトルになれるまで、今後とも、このまだまだ新しい「概念」の普及と定着にご支援、ご協力いただければ幸いです。
https://www.iri-net.org/loy/loy2012/#comment

この谷口さんのコメントを読んで、「ビブリオバトルに対して大きな貢献ができた、大役は果たした」と感じた。このときは、「これ以上ビブリオバトルに対して大きな貢献することもないだろう」と思っていた。Library of the Year 2012の大賞受賞のときは、ビブリオバトルの関係者もお祭り気分になっていたけれど、時間が経ってくるとまた日常がやってくる。個人的には、またビブリオバトルを緩やかに楽しむ日常に戻ったのである。

理事になる

ところが、思いがけず2013年6月からビブリオバトル普及委員会の理事のお役目をいただくことになった。前年のLibrary of the Year 2012のプレゼンターを務めたことで谷口さんとも以前より話すようになっていたことと、ちょうど東海地区の地区代表が入れ替わりをしたいという話が出てきて、谷口さんから理事就任へのご指名を受けたのである。

そういう立場になることはまったく予想もしていなかったけれど、Library of the Year 2012のプレゼンターの実績もあるし、さらに図書館業界に広めていくことを考えると、図書館関係者が理事の一人に入ってもらったほうがいいという判断もあったようだ。

たしかにせっかく大賞を取って図書館業界に名前が知られることになったので、理事の立場を継続的に関わったほうが良さそうだとも思った。普及委員会に加入するときも谷口さんのお誘いにそのまま乗っかった感じだったが、理事の就任も流れに身を任せるように話が進んでいったのである。

代表理事になる

理事になって2年後、谷口さんがサバティカルで日本を離れることになって、代表理事の役目を私に譲りたいという話になったときも驚いた。私は今でこそビブリオバトル普及委員会のメンバーとしては古い方になっているけれど、その当時はどちらかといえば比較的新参的な立場にあり、ビブリオバトル普及委員会の代表なら、もっと早くから谷口さんと一緒に普及委員会を形づくってきた人たちもいらっしゃったからである。

なので、即答で快諾することはできなかったと思う。けれども代表理事の役目というのはあくまでもビブリオバトル普及委員会という組織を維持・発展させていく立場であるので、活動年数はそこまで気にしなくてもいいという考えに至った。

それと本業との兼ね合いで「代表理事を務めることができない」という人もいて、そのあたりは谷口さんや私のように、大学教員という立場の方がある程度動きが取りやすいという判断もあった。谷口さんからも「Library of the Year 2012の大賞受賞のときのプレゼンターも務めたので(普及委員会内でも名前が知られているし)適役だと思う」という誘い文句をもらった。

私としても、ここでこの話を受ければ、「より図書館業界とのつながりを強くできるのでは?」という思いに至った。図書館の世界にお世話になっている自分がビブリオバトル普及委員会の代表になれば、「図書館におけるビブリオバトルの開催をより後押しできるのでは?」と思うようになった。そういう覚悟の気持ちが芽生えたのである。当初は自分の意志で選んだことではなかったけれど、2015年6月から2021年6月までの6年間はビブリオバトル普及委員会の2代目の代表理事を務めることになった。

谷口さんのサバティカルは1年間だったので、1年後には再び谷口さんに代表を戻すように、私が「1年間だけ代表代理を務める」という案も出したけれど、それは谷口さんが固辞された。ビブリオバトル普及委員会としては、きっぱりと「代表の交代」というところを公言することになった。

代表理事に就任した当初は任期も決めていなかったけれど、3年くらい代表を務めてきたとき、「同じ人が長く代表を務めないほうがいい(組織は新陳代謝があったほうがいい)」という気持ちにもなり、代表理事については「連続6期まで」という規程を盛り込んでもらった。谷口さんが2010年から連続5期代表を務めていたので、私も同じく「連続5期の5年間で、2020年6月の総会で退任するのでどうか?」と提案したのだけれど、その先の代表理事を誰が務めるのかという問題もあったので、希望より1年長めの「連続6期まで」とした。

それでも、代表理事から身を引くことは早い段階で決めていて、それがたまたま2021年6月になったということになる。任期を決めたときは先のことはまったく読めなかったけれど、結果的にCOVID-19が流行し始めて世の中が混乱した時期に重なっていたので、2020年6月に代表交代ということにならなくてよかったと思う。

Library of the Yearの選考委員長になる

一方、私はLibrary of the Yearの選考委員を2011年から務めている。Library of the Yearそのものは2006年に始まっているので、こちらもビブリオバトル普及委員会と同じく、途中から加わったメンバーである。Library of the Yearを始めたのは、図書館業界でも上の世代の人たちなので、私が2011年にそれに関わるようになったときは、メンバー全体の構成のなかでは若手のうちの一人だった。

途中から加わった立場ということもあって、比較的引いた目で見られる位置にいたことで、これまでに2回の総括記事を書くお役目もいただいた。

この二つの記事は、版元であるアカデミック・リソース・ガイドの岡本真さんに執筆を強く勧められたことにもよる。

Library of the Yearに関わり始めて10年を超えるようになった。そして今年の「Library of the Year 2021」では、選考委員長のお役目をいただくようになった。

Library of the Yearに関わるようになったことも不思議なご縁ではあり、旧知の福林靖博さん(上記『LRG』13号の共著者)からのお誘いに乗り合わせた形なのだけれど、まさか10年間という時間が経ってみて、こうして選考委員長の立場になるとは予想もしていなかった。昨年度まで選考委員長を務めていた山崎博樹さんに立場を託される形になっているのだけれど、山崎さんからのそのときの誘い文句に、「ビブリオバトル普及委員会の代表も長く務めていたから適役でしょう」というものがあった。「そういうものかな?」とも一瞬思ったけれど、「そういうものかもな」と思い直して、せっかくの話をお引き受けすることにした。ビブリオバトル普及委員会の代表理事の件も同じだけれど、それでも自分がまさかそういう立場になるとは思いもよらなかった。

こうして10年くらいを振り返ってみると、私はビブリオバトルの普及活動に関わったことでLibrary of the Year 2012のプレゼンター役をいただくことになって、プレゼンターを務めて大賞を受賞してみたら普及委員会の理事の役目から二代目の代表理事の打診を受けるようになって、ビブリオバトル普及委員会の代表理事を務めてみたらLibrary of the Yearの選考委員長のご指名を受けるようになってしまったのである。

どちらも自分から代表理事や選考委員長をやろうと思ったわけではなくて、それぞれのキーマンである谷口さんと山崎さんからのご指名によるものである。私はたまたまその節目のときにその場に立っていたように思える。誘われるままにそれをそのまま受け入れたことになる。

「本について語る」ことを目指すビブリオバトルと、「図書館について語る」ことを目指すLibrary of the Yearは、両方ともおもしろい取り組みである。Library of the Yearとビブリオバトルは、一見すると別の取り組みのように思えるかもしれない。けれどもどちらもおもしろさや良さを言語化するという行為である。私のなかではそれほど大きな差はない。Library of the Yearは2006年に始まり、ビブリオバトルは2007年に始まっている。そういう取り組みが動き始めたこの15年くらいの時期に、私はたまたまその近くで活動を見ることができたのである。

私は誰かが「おもしろい」「良い」ことを語る時間が好きだ。そういう場所が好きだ。そんな風に思っていて、そういう時間と場所をつくる立場が巡ってくることになった。これはとてもありがたいことだと思う。

Library of the Year 2021 最終選考会

さて、このような経緯で選考委員長を担当することになったLibrary of the Yearなのだけれど、今年度の「Library of the Year 2021」は2021年11月26日(金)に最終選考会を行っている。

本日よりその動画アーカイブを公開し始めます。

こちらは年内いっぱいで公開終了となります。ぜひご覧ください。

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