ビブリオバトルについての雑誌記事(2010〜2013年)
ビブリオバトルのメディア関連情報
ビブリオバトルを取り上げた新聞やラジオ放送などのメディア関連情報は、ビブリオバトル普及委員会の公式サイトに一覧としてまとめられている。
新聞記事の場合、どこかで実際に行われているビブリオバトルの様子を取材した紹介記事が多く見られる。読書文化が普及していく際のひとつの方法としてのビブリオバトルという書き方がされている。
雑誌記事がどのように公開されているのかについては、ここにはまとめられていないので、CiNii Articlesで確認をしてみる。
2010年のビブリオバトル
2010年のうちにビブリオバトルについての雑誌論文/雑誌記事が掲載されたのは、ビブリオバトル考案者の谷口さんによる共著論文らしい。
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谷口忠大,川上浩司,片井修「ビブリオバトル:書評により媒介される社会的相互作用場の設計」『ヒューマンインタフェース学会論文誌』第12巻第4号,2010年11月,p.427-437.https://doi.org/10.11184/his.12.4_427
「場の設計」について論じたこの1編が、日本で(というより世界で)初めてのビブリオバトルについての雑誌記事として記録に残ることになる。
この論文の受付日は2010年2月5日であることが確認できるが、2010年はビブリオバトル普及委員会が発足した年でもある。
この論文が公開された時点で、ビブリオバトル普及委員会にも言及がなされていることが確認できる。
これ以降、ビブリオバトルを研究対象として取り上げる動きも出てくるようになる。
2011年のビブリオバトル
2011年には、以下の3本の記事を見つけることができる。
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谷口忠大,須藤秀紹「コミュニケーションのメカニズムデザイン:ビブリオバトルと発話権取引を事例として」『システム/制御/情報』第55巻第8号,2011年,p.339-344.https://doi.org/10.11509/isciesci.55.8_339
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若手編集委員会,若手読者モニター等有志「UC@management つながる つなげる 未来を創る 誌面再現!ビブリオバトル」『大学マネジメント』第7巻第8号,2011年11月,p.38-41.https://ci.nii.ac.jp/naid/40019055289
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谷口忠大「ビブリオバトル:書評を媒介としたコミュニケーション場の広がり(特集 大学図書館2011)」『図書館雑誌』第105巻第11号,2011年11月,p.753-755.https://ci.nii.ac.jp/naid/40019070759
こちらも考案者の谷口さんと、現在のビブリオバトル普及委員会の代表を務めている須藤さんが共著で書かれた「発話権取引」という観点からのデザインの問題が書かれている。
また、大学図書館という特集テーマを語るなかで『図書館雑誌』から原稿依頼がされていることからも分かるように、早い段階で図書館業界からのアプローチがされている。
図書館業界とビブリオバトルとのつながりとしては、2012年の「Library of the Year 2012」の大賞受賞という実績の影響力が大きいが、その前年となる2011年に書かれていたことが確認できる。
ビブリオバトルはそもそも大学で誕生したゲームだが、それが広まっていく過程においては、図書館業界のなかでも特に大学図書館の立場からの言及がもっとも早かったわけである。
そのほか、谷口さんが関わっていない記事として、大学マネジメントの観点からの文章も登場するようになる。この頃のビブリオバトルは、大学のなかの活動のひとつとして見られていたことが確認できる。
2012年のビブリオバトル
2012年は11月にLibrary of the Year 2021の大賞受賞という大きな動きがあった年であるが、これは2012年の年末の動向であるため、上半期についてはLibrary of the Yearの動きとは切り離して振り返らなければならない。
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若生政江「「ビブリオバトル首都決戦2011予選会in城西」を開催して」『薬学図書館』第57巻第1号,2012年1月,p.67-69.https://libir.josai.ac.jp/il/meta_pub/G0000284repository_JOS-YAKUTO57-1-p67
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平正人「「ビブリオバトル」と大学の授業:《ビブリオバトルin文教》の試み(特集 学生と本を繋ぐ試み)」『大学の図書館』第31巻第3号,2012年3月,p.34-36.https://ci.nii.ac.jp/naid/40019205532/
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谷口忠大「談話室(第29回)知的書評合戦ビブリオバトル」『専門図書館』第254号,2012年7月,p.37-40.https://ci.nii.ac.jp/naid/40019352351,https://jsla.or.jp/publication/bulletin/no254/
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谷口忠大「書評を媒介としたコミュニティデザイン:ビブリオバトルの実践」『計測と制御=Journal of the Society of Instrument and Control Engineers』第51巻第8号,2012年8月,p.726-731.https://doi.org/10.11499/sicejl.51.726
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安部尚登「ビブリオバトルの概要と、その広がりについて」『北海道地区大学図書館職員研究集会記録』第55巻,2012年8月,p.19-21.https://ci.nii.ac.jp/naid/40019577776/
谷口さんはこの年もビブリオバトルについての論考を書いている。2010年から毎年何らの形でビブリオバトルについて発表していることが確認できるが、2012年は「コミュニティデザイン」という切り口から取り上げられている。
また、図書館業界からの注目はこの年にも見られている。
一つには大学生・大学院生による全国大会「ビブリオバトル首都決戦2011」の開催報告が、城西大学水田記念図書館の若生政江さんが『薬学図書館』に発表している。
そして文教大学の平正人先生が大学の授業のなかでの取り組みを『大学の図書館』に、谷口さんも『専門図書館』にビブリオバトルに関する文章を寄稿している。
2011年に引き続き、大学生とビブリオバトルとの関係が強調されているように思える。
また、北海道地区の大学図書館職員研究集会で、ビブリオバトル普及委員会の安部尚登さんが講師役を務めている。安部さんは後に札幌で開催した「ビブリオバトル春のワークショップ2014」の調整役を務めるなど、ビブリオバトル普及活動にとても熱心にされている方である。
「Library of the Year 2012」の大賞受賞前にもかかわらず、北海道地区の研究集会のテーマにビブリオバトルが選ばれているのも、研究集会の企画者らがビブリオバトルという新しい取り組みに対して敏感に反応していたように思える。
2012年はビブリオバトルについての本はまだ出ていなかった時期であることを考えると、読者がある程度限られる専門誌への掲載とはいえ、こうした記事が次々と書かれるようになった状況は、その後の展開を後押しすることにもつながっていたと思う。
2013年のビブリオバトル
2013年は5月に文部科学省「第三次子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が公表され、そのなかでビブリオバトルについての言及がされたという動きがあった年である。
この年は次のような雑誌記事が発表されている。
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奥健太,赤池勇磨,谷口忠大「推薦システムとしてのビブリオバトルの評価」『ヒューマンインタフェース学会論文誌』第15巻第1号,2013年2月,p.95-106.https://doi.org/10.11184/his.15.1_95
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内藤真理子「聞き手に寄り添うことを意識するための試み:ビブリオバトルを通して」『日本語教育方法研究会誌』第20巻第1号,2013年3月,p.86-87.https://doi.org/10.19022/jlem.20.1_86
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高井亨「ビブリオバトルin鳥取実施報告」『地域イノベーション研究』2013年3月,p.37-42.https://ci.nii.ac.jp/naid/40020568517/
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奥健太,赤池勇磨,谷口忠大「ビブリオバトル:推薦システムとしての評価」『システム制御情報学会研究発表講演会講演論文集』第57巻,2013年5月,p.6.https://ci.nii.ac.jp/naid/40020161774/
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「ビブリオバトル入門~開催のコツ教えます~」『情報の科学と技術』第63巻第6号,2013年6月.https://doi.org/10.18919/jkg.63.6_App3
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「「公式ガイドブック」がついに出版!!ビブリオバトル入門~本を通して人を知る・人を通して本を知る~」『情報の科学と技術』第63巻第7号〜第12号,2013年6月〜12月.https://doi.org/10.18919/jkg.63.7_App6
※2014年と2015年にも同様の広告が掲載されている。 -
前田由紀「ビブリオバトルがつなぐ生徒の知とコミュニケーション(特集 読書指導のあたらしい形)」『学校図書館』第753号,2013年7月,p.33-35.https://ci.nii.ac.jp/naid/40019681699/
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山路奈保子,須藤秀紹,李セロン「書評ゲーム「ビブリオバトル」導入の試み:日本語パブリックスピーキング技能育成のために」『日本語教育』第155巻,2013年8月,p.175-188.https://doi.org/10.20721/nihongokyoiku.155.0_175
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蓮行,谷口忠大「安全演劇ワークショップの社会実装に関する議論」『Communication-design』第9巻,2013年8月,p.85-99.http://hdl.handle.net/11094/25968
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副島雄児,田尾周一郎,平井康丸「本を通して仲間を知る:コアセミナーでの試み」『九州大学附属図書館研究開発室年報』2013年9月,p.35-44.https://ci.nii.ac.jp/naid/40019818331/
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副島雄児,田尾周一郎,平井康丸,金山素平,木村俊道,堀優子,井川友利子,大村武史,宮嶋舞美,工藤絵理子「本を通して仲間を知る:コアセミナーでの試み」『九州大学附属図書館研究開発室年報』第2012/2013号,2013年9月,p.35-44.https://doi.org/10.15017/27254
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市村櫻子「東京大学柏図書館の地域社会への貢献:「東京大学柏図書館友の会」と「地域との連携」」『大学図書館研究』第99巻,2013年12月,p.24-32.https://doi.org/10.20722/jcul.197
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谷口忠大「図書館でのビブリオバトル実施アドバイス(本と人,人と人をつなぐ仕掛けづくり)」『LRG=ライブラリー・リソース・ガイド』第5号,2013年12月,p.50-64.https://ci.nii.ac.jp/naid/40019914461/,https://www.slideshare.net/arg_editor/lrg5201312
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天川勝志「保育科におけるキャリア教育としてのビブリオバトルの実践と学習効果に関する考察」『聖徳の教え育む技法:(FD)紀要』第8号,2013年12月,p.49-64.https://ci.nii.ac.jp/naid/40020039944/
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伊波恵里奈,文化情報学研究室「ビブリオバトル 沖縄国際大学予選会実施報告・感想レポート」『沖縄県図書館協会誌』第17号,2013年12月,p.90-93.https://ci.nii.ac.jp/naid/40021332468/
この年も谷口さんの関わっている研究が多い。
「推薦システム」「演劇ワークショップ」などのキーワードのほか、『LRG=ライブラリー・リソース・ガイド』に「図書館でのビブリオバトル実施アドバイス」も発表している。図書館とのつながりも意識しながらも、ビブリオバトルの機能を探るような研究を行っていることがわかる。
『情報の科学と技術』の第63巻第6号には、谷口さんが2013年6月30日に千代田区役所区民ホールで講演会を行う告知が掲載されている。
これに合わせて『ビブリオバトル入門~本を通して人を知る・人を通して本を知る~』の販売も行われている。
主催者は千代田区立千代田図書館/千代田区読書振興センター/一般社団法人情報科学技術協会(INFOSTA)となっている。
一般社団法人情報科学技術協会(INFOSTA)はこの年の6月に発売したばかりの『ビブリオバトル入門~本を通して人を知る・人を通して本を知る~』の版元でもあるため、新刊のPRも兼ねた講演会のようである。
この時点では『ビブリオバトル入門~本を通して人を知る・人を通して本を知る~』と谷口さんの『ビブリオバトル:本を知り人を知る書評ゲーム』の2冊だけがビブリオバトル関連図書として出版されており、本が出たことでビブリオバトルが大きく話題になり始める時期でもある。
ビブリオバトルが世の中に広まっていく気配が高まっている。
『情報の科学と技術』には、翌月の第63巻第7号以降、毎月『ビブリオバトル入門~本を通して人を知る・人を通して本を知る~』の広告が掲載されている。
この広告は2015年12月の第65巻第12号まで続くことになる。
また、この年以降はさまざまな人たちが研究テーマにビブリオバトルを取り入れるようになる。
日本語教育における「教育方法」「スピーキング技能育成」、学校図書館における「読書指導」、大学図書館における「地域貢献/地域連携」、保育科における「キャリア教育」など、ビブリオバトルが多様な研究分野から注目されるようになってきたことがわかる。
そのほか、2012年に続いて大学生大会の予選開催報告も見られる。
これは大学生大会が徐々に拡大してきたことを受けて、大学の教職員側からの反応も見えてくるようになったということでもある。
ビブリオバトルの大学生大会は学生だけのものではなく、それをサポートしている教職員の話題にもなってきているわけである。
以上のようにまとめてみると、ビブリオバトルの雑誌記事はビブリオバトルそのものの機能を探っていく研究(ビブリオバトルとは何か)と、ビブリオバトルをどのように活用するのかという研究や実践報告(ビブリオバトルをやってみたらどうだったのか)に大きく二分されていることがわかる。
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