本を一冊紹介してほしい、誌面で
誌面で本を紹介するとき
ビブリオバトルの大会そのものを取材してもらった場合は、その記事には当日に発表された本の一覧が掲載されたり、そのときのチャンプ本を発表した人(バトラー)の名前やインタビューが載ったりすることになる。
一方、ビブリオバトルへの取材という場合には、大会ではないときの普段行っているビブリオバトルが取材されることもある。ビブリオバトルの愛好者団体は全国各地にたくさんあって、そういう本を介したコミュニティがつくられているところが注目される場合である。
このときに注目されているのはあくまでも「本について語り合う場」なのだけれど、空いている紙面を埋めるためなのか、それにあわせて「何かおすすめの本を1冊紹介してください」と言われることがある。もちろんビブリオバトルの公式ルールにしたがった本の紹介ではないので、これをビブリオバトルとは呼ぶことはできない
たまに「誌上ビブリオバトル」のような事例を見ることもあるけれど、ビブリオバトルは名称利用の規約も定めているので、それらは公式ルールに則っていない用語のつかい方になってしまっていることになる。
ビブリオバトルという言葉のつかわれ方
ビブリオバトル普及委員会としては、ビブリオバトルという用語をあくまでもお互いのおすすめする本を紹介しあうゲームを意味するようにお願いしているのだけれど、言葉は本来意図している用い方ではなく、別の意味が付与されて拡張して用いられてしまうので、単に「誌面でおすすめの本を紹介する」という企画にビブリオバトルという言葉がつかわれてしまうのである。
こういう誌面でのおすすめ本の紹介という記事のつくり方は過去にいくらでもあったと思うけれど、ビブリオバトルが登場する(発明される)以前には、「誌上ビブリオバトル」という表現は当然見られなかったわけで、その点で私たちは、ビブリオバトルという言葉が「本を紹介するゲーム」という本来の意味から、「本を紹介する行為」「記事の編集」へと移り変わっていく過程を見ていることになる。
ビブリオバトル普及委員会としては、そういうつかわれ方は本来意図するところではないのだけれど、ビブリオバトルという表現は考案者の谷口さんがあえて少年マンガのようなネーミングにしたとどこかで説明をしていて、もともとそういう意図があってつくられた造語なのでキャッチーな響きがあって覚えやすいし、つい真似してつかいたくなってしまう気持ちも分かる。
単に「本を紹介する」こともビブリオバトルと呼んでみたくなる。考案者が意図しない方向に言葉の意味が拡張し始めている。
ビブリオバトルはあくまでもゲームである
ビブリオバトルに関わっていると、「おもしろい本に詳しい人」というイメージがつきまとってくるようである。本を題材におもしろい交流の場をつくる人には、おもしろい本も集まってくるはずである。
ビブリオバトルのインタビューの機会に合わせて、私のところにも「おすすめの本を何か一冊ぜひ誌面で紹介を」という依頼が来ることがある。こういうときに、過去にもやはり「誌上ビブリオバトル」というような表現の見出しがアイデアレベルで付けられることがあったのだけれど、正式な公開に至るまでには、ビブリオバトルという用語を見出しから外してもらうように校正段階で直してもらっている。
ビブリオバトルはあくまでもみんなで本を紹介し合うコミュニケーションゲームである。自分がその本を薦める理由を、話し言葉によってお互いに語り合って投票によってチャンプ本を決めていく。そういう一連のプロセスをビブリオバトルの公式ルールとして設定している。
自分一人だけで、誌上を通じて文字で本を紹介するものはビブリオバトルとは呼ばないのである。
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