はじめてのBib-1グランプリ
ビブリオバトルの新しい楽しみ方
2021年11月6日・7日に「Bib-1グランプリ2021」が開催された。
ビブリオバトル普及委員会が企画する初めての取り組みで、東西対抗で20名のバトラーが5回に分けて対戦を行ったものである。
このイベントの趣旨は「開催に寄せて」に以下のように書かれている。
大会形式の販促効果を期待するビブリオバトルと、少人数で楽しみ本と人との出会いが密になる草の根運動的ビブリオバトルの二極化も進み、どちらか一方のメリットしか知らない方も増えてきております。「読書活動やビブリオバトルを推進していく上で、どちらの魅力も一度に体験できるイベントが必要ではないか」と、普及委員会内有志メンバーで話し合いを重ね、この度「ビブリオバトル普及委員会内による東西交流戦」を試験的に開催することといたしました。
東西の対抗戦という形態は取ってはいるが、個人が勝ち上がっていくような大会ではなく、参加者みんながビブリオバトルを楽しむ様子を見せている。
チャンプ本は決めるけれども、ビブリオバトルはみんなが主役になる。
ビブリオバトルは自分が本を紹介ながら話すのも楽しいけれど、誰かが話している様子を見ることも楽しい。
本について語ることのおもしろさをシンプルに追求する。
そういうおもしろさが伝わってくるイベントになっている。
COVID-19の影響でさまざまな分野でオンライン化が進んだ昨今の状況は、従来の対面によるビブリオバトルの実施が困難になったという面もあるけれど、オンライン化が進んだからこそこういう形で全国からバトラーが集まるという形式のビブリオバトルが実現することになった。
数年前まででは「オンラインでのビブリオバトルなんて(対面で集まれないなんて)」というように、やや否定的な意見も見られたりしたこともあったのだけれども、こうして世の中の状況が一変すると、オンラインを活用したビブリオバトルというのも方法としては十分おもしろさが伝わるものになっているし、新しい楽しみ方の可能性を増やすことになったとも言える。
ビブリオバトルの普及活動の形は、まだこういう可能性もあったのかということを教えててくれるようなイベントになっていた。
動画のアーカイブが残っているので、詳しくはビブリオバトル普及委員会の公式YouTubeを見ていただきたい。
Bib-1大賞
当日に紹介された本とチャンプ本の一覧は、以下のサイトにまとめられている。
今回のイベントでは、合わせて「Bib-1大賞(発表を聞いて実際に手に取った本)」というものも決定することになっている。
これは「買った本部門」「借りた本部門」に分けて集計がなされるしくみになっている。
2021年11月14日(日)が「Bib-1(発表を聞いて実際に手に取った本)大賞〆切」、2021年11月23日(火・祝日)が「Bib-1(発表を聞いて実際に手に取った本)大賞表彰」となる。
ビブリオバトルをやってみたその後の興味関心の動きを追うという点で、おもしろい試みである。
大会形式のビブリオバトルの特徴の一つに、ビブリオバトルを実施する本編を楽しむことだけではなく、紹介された本の情報が拡散されやすいことがある。
規模が小さいビブリオバトルでは、参加者に対して直接に本の情報が伝わるか、あるいはSNSやブログなどでその結果をウェブ上に公開するくらいしかできない。
しかし、規模が大きくなることで、書店を巻き込んで関連フェアを実施したり、図書館での展示などへとつなげることができるようになる。
発表者が「何を紹介しようか」と考えて選んできた本は、ビブリオバトルを実施した後に、より広く多くの人の目に触れるように拡散されていくようになる。
そもそも本について5分間で話すというルールは、本にまつわる情報量を圧縮することを促している。
5分間のなかに「ビブリオバトルの発表で何を話したか」という情報が凝縮される。
ビブリオバトルの結果が書店の関連フェアや図書館での展示などにつかわれる場合、それらは「どんな本を紹介したのか」という情報としてさらに圧縮されていく。
「誰がどんな本を紹介したのか」という情報が切り取られていく。
自分が選んだ本の声がより大きくなる。
大会形式というのは、バトラーが発した声をより大きく、より遠くへ運んでいくための増幅装置である。
自分の読書体験を声に出して表現することである。
本を読んだ自分、本を選んだ自分というもののイメージを拡散する行為である。
あとに残されるのは、選ばれた本についての情報である。
そしてその情報は、また新たな別の読者を生み出す力を発し続けている。
「Bib-1大賞」の投票の期限は1週間くらいなので、ぜひいろいろな方に手にとってみてほしいと思う。
出場バトラーのインタビュー
出場バトラーの人たちが、どういう思いで今回のイベントに参加したのかをインタビューから見るという試み。
ビブリオバトルで紹介される本もおもしろいけれど、その本をビブリオバトルで紹介する人もおもしろいのだということがわかる。
本とは著者が生み出したものだ。
そして本は読者を生み出していく。
読者同士というつながりを生み出していく。
課題図書を決めてみんなで同じ本を読み合うために集まる読書会では、参加者みんなが読んでいるから、その本と特定の人とを結びつける力が働きづらい。
ビブリオバトルは「本を紹介する」ところで終わる。
みんなで本を読み合うことはしない。
だからこそ「本を紹介する人」というところに注目が集まってくることになる。
本の内容をみんなで深堀りするのではなく、「あなたはなぜその本を選んだのか」「あなたはその本をどんな風に読んだのか」を語り合う。
徹底してその本の紹介者の視点に立って対話が進んでいく。
インタビューのなかでは、「注目しているバトラー」というのも聞いている。
ビブリオバトルを通して、全国各地にさまざまなバトラーがそれぞれの楽しみ方でビブリオバトルに関わっているのがよくわかる。
ビブリオバトルを通じて、全国各地に仲間が増えていく。
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