ビブリオバトルの普及活動を知る

全国各地からビブリオバトル普及委員会のメンバーが集まり、ビブリオバトル普及活動ののさまざまな課題や具体的な手法について話し合う機会がある。普及活動には対外的なものもあるけれど、普及活動に関するお互いの能力向上を図るためのメンバー同士による対内的なものもある。ビブリオバトルの普及活動を考える同じ志を持つ者同士で、ビブリオバトルというゲームの特性についてじっくりと話し合う機会を設けている話。
岡野裕行
2021.07.26
誰でも

ビブリオバトルの普及活動が目指すところ

ビブリオバトル普及委員会の活動目的は、公式ウェブサイトにも次のように書いているように、「ビブリオバトルをより広く普及させること」というシンプルなものである。

ビブリオバトル普及委員会は、知的書評合戦ビブリオバトルをより広く普及させることを目的として活動する任意団体です。主催や参加、見学、取材のご相談などは、お気軽に以下の事務局までご一報ください。
https://www.bibliobattle.jp/aboutus

ただし、ビブリオバトルの普及の形は多様である。ビブリオバトル普及委員会のメンバー同士であっても、ビブリオバトルの普及活動で想定する形は人によって異なっている。そしてビブリオバトル普及委員会では、さまざまな人たちから実施の相談を受けているが、依頼者の想定するビブリオバトルの形も多様である。
ビブリオバトルはいろいろな人たちが気軽に楽しめることができるゲームであるがゆえに、どういう形でそれを実施するのかを探らなければならない。

ビブリオバトルを活動のなかに取り入れたいと相談を寄せてくる主体には、図書館・学校・企業などさまざまな組織がある。

たとえば図書館の場合、どういう目的でビブリオバトルを図書館活動のなかに取り入れようとするのかは、館種(公共図書館・学校図書館・大学図書館・専門図書館・国立図書館)によっても異なっている。図書館の館種が違えば図書館利用者の顔ぶれも変わる。図書館の違いによって、ビブリオバトルの参加者は大きく異なってくる。

学校教育で導入する場合は、学年によっては通常の「5分間の発表/2〜3分間の質疑応答」のビブリオバトルではなく、「3分間の発表/2分間の質疑応答」のミニ・ビブリオバトルで実施することも多い。発表者の年齢が低いときには、5分間の発表時間はやや長くなってうまく発表できないことも多いためである。
また、授業の一環として実施する場合は、授業時間の制約があるため、全員の発表/質疑の時間を確保するためにミニ・ビブリオバトルを採用することもある。発表者が5分間話すのが難しいからという理由だけでなく、全体の活動時間から考えて、一人あたりの発表時間をミニ・ビブリオバトルとして短くしなければならないこともある。
発表時間の問題以外にも、学校教育におけるビブリオバトルでは、教員が主体となって企画する場合、学校司書や職員が企画する場合、児童・生徒が自主的に活動をする場合など、誰の発案によってビブリオバトルを実施することになったのかという違いもある。
小学校・中学校・高等学校・大学では、それぞれに開催目的や開催方法も異なる。そのため、学校への普及活動というのも、それぞれの特性に合った形を探らなければならない。

一方、「誰に対してビブリオバトルを普及させるのか」という観点のほかに、「誰がビブリオバトルを普及するのか」ということも考えなければならない。実際のビブリオバトルの普及活動を担っているのは、全国各地で草の根的に活動をしているビブリオバトル普及委員会に加入している有志のメンバーである。
ビブリオバトル普及委員会のメンバーは、あくまでも有志による集まりであるため、普及活動を行っているメンバーは普段の仕事も年代も異なっている。

ビブリオバトル普及委員会には、講師派遣の依頼がよく寄せられる。そういった要請に応えるため、「ビブリオバトルというゲームがどういうものなのかをまだ知らない人たちに教える」という任務がビブリオバトル普及委員会のメンバーには与えられることになる。そうなると誰がこの普及活動の役目を担うのかによって、ビブリオバトルというゲームの伝わり方は異なってくることになる。
ビブリオバトル普及委員会のメンバーは多様なメンバーから構成されているため、それぞれが考えるビブリオバトルの魅力に基づいて講師の役目を担っている。

同じように「ビブリオバトルの講習会を開催する」という機会があったとしても、「どういった人たちに対して」「誰が講習会の講師を担当するのか」という条件によって、さまざまな普及活動の形が各地で育っていくことになる。
多種多様な立場の人たちが関わっている以上、ビブリオバトルの普及活動もまったく同じ形にはならないし、むしろ多様なビブリオバトルの形がそれぞれの地域で育っていくことは、ビブリオバトルの普及においては良いことだろう。ビブリオバトルの楽しみ方はさまざまであり、その普及の形もさまざまである。

ビブリオバトル春のワークショップのこと

「ビブリオバトルを広く普及する」という目的は、どういった状況になれば普及したということになるのか、その正解の形というものがない。
ビブリオバトル普及委員会のメンバーは、それぞれのコミュニティの特性に合ったビブリオバトルの説明を行う。自分の経験をもとにしながら、さまざま関連書籍を参考にしながら、「ビブリオバトルとは何か」ということを語っていく。
講師役を務める人も、最初は探り探りでビブリオバトルの楽しみ方を伝えている。

そのとき、何かしらの普及活動のノウハウが共有されていれば、講師として人前に立つ際にも、ビブリオバトル普及委員会としてもある程度の質を保証することができる。誰が講師を務めるのかによって講習会の内容が異なるのであれば、できる限りその差は小さくしておきたくなる。より良い講習会の形や講じ方があるならば、それに倣ってみたほうが良いだろう。

そこで発案されたのが「ビブリオバトル春のワークショップ」である。ビブリオバトル普及活動のなかで出てきた問題点についてのディスカッション、普及活動に便利なツールの共有、ビブリオバトル普及活動の展望、各地のビブリオバトル普及状況など、ビブリオバトルの可能性を広げつつ、より質の高い普及活動を目指そうとしている。

「ビブリオバトル春のワークショップ」は2012年に始まったものである。
2012年から2014年までは2日間をかけて泊りがけで実施していたが、その後に「ビブリオバトル・シンポジウム」という別の取り組みが2014年から始まったことに伴って、2015年からは1日だけの開催に縮小していくことになる。
そしてビブリオバトル・シンポジウムが軌道に乗ってきたこともあり、2017年を最後に春のワークショップは終了することになった。

「ビブリオバトル春のワークショップ」のこれまでの開催テーマを振り返ると、以下のようになる。

  • 2012年6月9日・10日「書評×コミュニティ×ゲーム=ビブリオバトル」
  • 2013年6月8日・9日「ビブリオバトル2013 普及四年目のアレグレット」
  • 2014年6月14日・15日「ビブリオバトル未開催地で、どのようにビブリオバトルを開催し、定着させていくか」
  • 2015年6月28日「コミュニティとビブリオバトル」
  • 2016年6月19日「アイテムでひろがるビブリオバトル」
  • 2017年6月24日「ビブリオバトルのプラットフォーム構築を目指して」

過去の開催テーマを振り返ってみると、それぞれのタイミングで、普及活動におけるもっとも関心の高いトピックスが集まっている。自分が実施しているビブリオバトルの形、見てきたビブリオバトルの形などの情報を共有することで、新たな気づきが得られる。ビブリオバトルの実施方法の多様性を知ることができる。

私自身は、2013年のワークショップで「「Library of the Year 2012」大賞受賞の意義とその後の動向」、2015年のワークショップで「ビブリオバトルとコミュニティ・メディアのこれから」という発表を行っている。また、2016年は会場校を担当したので、裏方に事務作業に徹していた。

また、ビブリオバトルの話をしながら交流会の場も兼ねているため、普段はなかなか顔を合わせることがない遠方の普及委員会のメンバーとも、対面でお互いの活動について話し合える機会になっていることも重要である。特に初期のワークショップは泊りがけでの2日間の開催となっていたため、非公式な対話の機会も生まれている。

普及活動を進めるにあたっては、ツイッターやフェイスブックで気軽に情報交流ができるようになっていたという時代の流れもあり、全国各地の取り組みがウェブ上で可視化されるようにはなっていたけれども、ビブリオバトルというキーワードで各地から普及委員会のメンバーが集まり、直接的な交流ができる機会がつくられたことは、普及活動を進めるにあたってとても刺激的だったと思う。ビブリオバトル普及委員会の初期の活動として、「ビブリオバトル春のワークショップ」は重要な位置づけにある。

ビブリオバトルというゲームが誕生して、その普及活動という目的でメンバーが集まり、相互に交流が進むようになる。ビブリオバトルはそれぞれのコミュニティで楽しまれるとともに、全国各地にビブリオバトルの仲間が増え続けている。ビブリオバトルの普及活動に携わることで、全国各地の普及活動状況が見えてくる。

ビブリオバトルは公式ルールの通りにそれを楽しむだけではなく、「どのようにビブリオバトルを楽しむか」を語り合うという楽しみ方もある。そういう楽しみ方を教えてくれたのは、ほかの地域で活動されているビブリオバトル普及委員会のメンバーと話すようになってからである。

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